補聴器を購入したけれども活用できていない方や補聴器の印象をわるくして購入をあきらめた方がたくさんいらっしゃいます。この理由として、日本の補聴器販売形態に課題があると言われ続けていますが、難聴者の補聴器調整は決して簡単ではないことを考え合わせると、我々にもやるべき事がたくさんあります。
日本の補聴器事情の改善を目指して、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「補聴器相談医制度」がつくられました。一方、補聴器業界では、認定補聴器技能者、認定補聴器専門店の制度がその前からできていました。そして、耳鼻科医である補聴器相談医と補聴器を販売する立場の認定補聴器専門店の連携が推進され、その一環として「補聴器適合に関する診療情報提供書と報告書」がつくられました。
制度としては整いつつありますが、このシステムで補聴器を購入した方で、補聴器に満足されず筆者の病院に来られる方があります。来院された方は、あきらめなかった事が幸いでした。「聞こえるようになりたいという気持ち」が強く、面倒な病院通いを苦にされなければ大抵は救われます。一方、そんなことは思いもよらず、あきらめてしまう方のほうが多いと思われます。
補聴器外来をしていると、補聴器フィッティングの奥深さと、複数の視点による対応の大切さを実感します。補聴器臨床の経験から、補聴器技能者、言語聴覚士、補聴器相談医は具体的な課題を共有し、カウンセリングの方法、難聴者の思い、フィッティング手法を議論しあえる機会が必要と感じてきました。愛知県では、愛知医科大学名誉教授の故 瀧本勲先生が立ち上げられた「補聴器適合研修会」が長年開かれ、この三者が集ってきました。そして、この会のコンセプトを補聴器フォーラム東海が引き継ぎ、日本の補聴器事情の改善に微力ながら努めて参りたいと存じます。
認定補聴器技能者、補聴器相談医(耳鼻咽喉科医)、言語聴覚士は、立場の違いから視点が異なっています。難聴者が補聴器を活用できなかった原因には様々な要素がありますので、この三者の異なる視点には価値があります。この三者の良好な連携により、補聴器購入者の高い満足度が世間に広く認知されれば、誰でも販売できることで適切な調整が行われていない日本での課題も自然淘汰されることが期待できます。そういう意味で、世間の補聴器事情を改善できるかどうかは我々次第と考えています。何とぞ、よろしくお願い申し上げます。
第一部 補聴器講習会大ホール(2階)
第二部 補聴器適合研修会大ホール(2階)